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【チベット:永沢哲】No5_自然なプロセスに内在する智慧 ~植物昏睡状態の人とのコミュニケーション~

 自然智というテーマに関連して、いま僕はアーノルドーミンデルというプロセス指向心理学の人にとても興味を持っています。ミンデルの仕事の一つに、「コーマ」という植物昏睡状態の人とのコミュニケーションを扱ったものがあります。植物状態の人とは言語によるコミュニケーションができないわけですが、体を通じて出てくるいろいろなサイン、呼吸の変化などの情報を読み取っていって、これをフィードバックする。その過程を通じてコミュニケーションのチャンネルがどんどん変わっていって、それまで話せなかった人が話すようになったり、身体の動きに変化が出てきて、それを通じてイエスとノーの合図を設定してコミュニケーションしたり、いろいろなことが可能になっていくのです。

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 ミンデルの考え方の背景にあるものは、自然のプロセスに従っていくということ
です。自然のプロセスというのは、僕らが考えている知性とは違う、そこから見たらちょっと突拍子もないようなものも含んでいるわけですね。でもそれを避けないで、起こってくることに常に対応していくというやり方をとっています。
 現在の尊厳死とか安楽死の議論にはそういう視点が欠けていると思います。たとえばヨーロッパ的な安楽死の考え方はすごく意志的で、それは人間の中の自然と意識や精神を切り雕して扱おうとしてきた伝統の中から生まれてきたものですし、片や日本における自然死、尊厳死の考え方というのは、外から見て自然に見えるかどうかということに関心が集中してしまっているように感じます。外から見た時に自然死に見えたとしても、それは本当に自然なのかということがある。むしろ人工呼吸器を付けた状態であったとしても。たとえばそれで三か月間延命することが、その人にとって自然だということもありうると、僕はいま思っています。つまりその人の内的プロセスにとって意味がある、必要であるという場合があるということです。今までの自然の概念を組み換えたうえで、自然のプロセスに従っていくことができればいいなと思っているのです。自然ということをもっと違うほうから見るという、そういう意味でのミンデルの仕事は大変おもしろいと思います。

(文責は永沢哲)Johannes PlenioによるPixabayからの画像

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