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【湧】リトアニア

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 先頃、熱気球の仲間に招待されてソ連邦のリトアニアに行き、首都ビリニウスの空を数日間飛行した。参加者はヨーロッパ、アメリカから十三ケ国・三十機で百名のクルーであった。この国の民族独立運動が、ペレストロイカで一気に盛り上がったところで、外国人に対する歓迎ぶりは熱狂的であり、殊にたった二人のアジアからの参加者には、新聞やテレビは特別扱いであった。
 空から見たピリニウス市街は古い建造物が川や森に調和して美しく、古い教会の塔の問を飛び抜け、町はずれの菜園つきセカンドハウス村の上を飛び越えると、森と牧場と農地が果てしなく広がっている。
 気球はまったくの風まかせであるから、遠く離れたところに予告なしに飛んで行く。突然の空からのちん入者に農家の一家が飛び出してきて家に誘い入れ、即席のパーティーを開いて、手作りのソーセージやチーズ、パン、ワインでもてなしてくれた。その味は豊かな農業国の底力を感じさせるものであった。この家のテレビには、アメリカ亡命四十六年の後最近帰国した独立運動家が、街頭で演説している姿が映しだされていた。驚いたことは、そこの家の農民から沖縄基地や北方領土の問題について質問されたことで、この国の人達の世界情勢についての知識と関心の深さであった。これに対しわれわれ日本人は、どれだけ自国の置かれた境遇や地球の向こう側の国の出来事を捕えているだろうか。世界はいま、急速に変化しているということを実感させられた旅であった。  (MM) (月刊「湧」1989年10月号再掲)