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【湧】人間の自然能力No7

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竹居  結局文化というものは、人聞かやりやすいようにとか楽なようにといつもそういう方向で発達しているわけですよね。それが生命という視点から考えると、かなりマイナスになっているのです。
今村  そうですね。先ほど最も住みにくい家ということを言われましたか、僕らがニューヨークで荒川修作という建築家と最初に関わった建物は、まさにそういう場だと思います。
 つまり人間が何かにかかわる瞬間、そこに視覚が降り立ち、感覚か降り立ち、肉体が降りたつ場所というのはふんだんにあるわけです。それを既成の概念では、削って抽象化して、棚上げしてしまって
いる。その棚上げを全部やめようとした空間でした。ですからトイレに行くのに闇の中を歩いていって三時間くらいかかるというようなところですよ。
増田  恐らく今、我々が価値を与えているいろいろなものの中に負の遺産がある。それは価値かおるとか、ないとかの価値ではなくて、価値を与えていること自体が、負の遺産を含んでいるようなそ
ういう気がしますが。

竹居  確かに、今はいろいろなものが随分便利に暼ってきてしまっていますが、それが本当に生命にとってだめかというと、そうではないと思います。厳しい環境に取って替わって、生命自体を脅かすようないろいろな病気などがあっで、その問題をクリアしなければ生き延びられないような状況にあります。結局、生命を高めるための働きというのは、いつでも必ずあるわけです。それをクリアしていって、伸びるのが生命の実体であり。新しくなろう。広がろうというのが生命そのものの本質です。

 どんなに安易な環境を作ろうと、その環境に居る人間にはそれなりのクリアしなければならない問題が必ずやってくるのです。そういう自然淘汰というのが、常に働いているのです。

 ですから私は、悪い母親は反省する必要がない、大いに悪い母親でいなさいと言うのです。なまじ勉強して良い母親になろうなんて思ったらろくなことありません。

 本当の意味での勉強というものは、もっと違うところにあるのに、いわゆる識別の世界の勉強をしているんです。良い悪い、それよりこっちの方が良いという文化の進む方向はすべて識別の世界です。

 でも、生命は識別の世界では計れないものですからね。識別の世界を切り捨てて、本当にわかってくることなのです。そうでなければ体も見えません。この筋肉が硬くなっている、胃袋大きくなっている、そんなのみな識別の世界ですから、生命には全然関係ないのです。そういうレベルで、体をよくしようというのは、本当に的外れなことなのです。

 生命体というのは、もっとすばらしく芸術的なもの、それを知らなくてはいけ

ないと思います。