地湧社『湧』<blog magazine>

地湧社の読み物、情報を発信するWebマガジン

【湧】生命力

f:id:jiyusha:20190710231256j:plain

 一本のトマトの苗に、果実を二万個も実らせたという水気耕栽培の実験農場を見学した。ここを主宰する野澤重雄氏に直接お話をうかがうことができた。
 まず土は、多種類にわたる病原菌など、植物の成長にマイナスになる要素を持っているのでいっさい使わない。また肥料としては、有機物を使わず窒素、リン酸、カリなどの無機物を与えろというものである。すなわち、有機物はたとえて言えば完成した建物のようなものであるから、これを植物がとりこむには、いったん解体して体内で改めて建物をつくることになる。その解体作業は植物にとって大きな負担となるわけである。このようなマイナス要素を取り除いていったら、植物は限りなく成長し、タフで枯れることなく虫もつかずたくさんの果実を収穫することができた。
 実際に見たトマトはまるで樹木のようで、大きな温室いっぱいに枝を張り、赤い実を数え切れないほどつけていた。水中にあるその根は、大釜の中のうどんの如くぎっしりつまっていた。
宇宙のはかりしれない生命の力をとことん純粋に見届けてやろうという発想が、固定観念を破った実験となった。生命力という目に見えないものをこのような形で見せてもらえたことは、私にとって大いに刺激となった。
 さて、普通に畑で作られているトマトはなぜあの大きさなのだろう。きっとトマトの持っている莫大な生命エネルギーに拮抗する目に見えないもう一方の大きな力が働いているのだろう。
その成長阻害力を単なる害と見るか、あるいは何か意味あるものと見るかは難問である。

 一度読者の皆さんにうかがってみたい。(MM)(月刊「湧」1989年4月号)