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【チベット:永沢哲】No6_自然なプロセスに内在する智慧 ~コミュニケーションのプロセス~

 ミンデルの仕事でもう一つ僕が関心を持っているのは、組織とかコミュニケーションといった社会的な人間関係のプロセスを扱ったテーマです。普通、人間の集団があると、支配している人と支配されている人がいる、またはメーンストリームになっている人と周縁化されてしまっている人がいて。その立場によってコミュニケーションの様態が違ってくるわけです。

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 これについては、昔いろいろな社会運動について考えていたことがあって、アンチのスタンスをとる場合、コミュニケーションの様態がかなり暴力的になったり、情動の解放が大きなテーマになるという感じを持っていました。だけど実際には支配の問題を考えていったときに、メーンストリームの側から出てくる価値観、静かに平和に対話しましょうとか、暴力はよるわないようにしましょうとかいったことは、それはあるシステムを前提としているから成り立つ議論です。そのシステムの枠を越えなければならない
ときには、それまで抑えこまれていたいろいろな情動みたいなものが解放される機会を得たうえで、差異の問題が明らかになっていかなければいけないと思います。いかにお互いが違っていて、いかにお互いがわかっていないかということがはっきりしてくるような過程を踏んでいくということが非常に大事なのです。無意識のレベルでの信頼感があれば、意識のレベルで出てくる差具を認め合う可能性が開かれてきます。家族のレベルでも友人間でも、もっと大きく社会のレベルでも、問題がなくなるということはない
のだから、いったん情動の解放が行われて、ある種の交流とか納得ができるような状態、考え方は違っても気のレベルでというのかな、そういうレベルでエネルギーのコミュニケーションが成り立っているという状態ができたうえで、オープンな議論を続けていくことが必要だと思います。
 伝統的な社会における組織とか集団は、ある種の儀式化された行動パターンを小さいときから学習することによって成り立って行くようになっているわけですが、僕らはそれをもう維持できないわけだから、どう扱うかを考えていくことが必要です。基本的に向こう側に敵がいてこちら側に味方がいてという考え方はもうありえない。冷戦構造がなくなったように。これからいろんなところで直面してくる問題について、どう解決していくか、どういうふうにポジティブに選択していくかということかあるのだけど、そこにいたるプロセスを尊重するやり方ーミンデルはこれをワールドワークと呼んでいるのですが、そのやり方は非常に有益であろうと僕は思っています。たとえば議論しているときに、情動の爆発だけでいいということではないけれども、それを抑え込むことによって何か問題が解決していくと考えるのは幻想であるというふうに思います。
 ナチュラルな過程の中に内在する智慧を信頼すること、これが今僕がいろいろな仕事を通じて考えていることです。
(文責は永沢哲)Stefan KellerによるPixabayからの画像