『湧』<blog magazine> nishitakesi

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【湧】ネイティブ・ピープル

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 アメリカのアリゾナ州には、古くからナバホやホピと呼ばれる部族が生活を営んでいる。近ごろ心ある人は、このような部族の人々をネイティブ・ピープルと呼び、人類の未来にとって大切な存在であるという認識を深くしている。
 私は、この部族の地の広い草原や砂漠の台地に立って、太陽の出入りと月の出入りが映しだす見事な風景を数日間にわたって飽かず眺め通し、夜毎に満天の星の中に身をさらした。そうしてこの地の歴史に思いを馳せた。
 スコット・オデールという人が史実をもとに書いた、『ナバホの歌』という物語がある。昔、平和に暮らしていたナバホの少女が、ある日突然奴隷商人のスペイン人に捕らえられて遠隔地に連れてゆかれる。その時に、少女は背中に北極星を感じながら南へ何日歩き、東に何日歩いたということを覚えていて、砂漠の中を確信をもって逃げ帰る場面がある。私は、この話にわが意を得たりとほくそ笑んだものだ。私にはいつの頃からか見知らぬ遠い所に行くと、無意識に北極星の位置を確かめる癖があるからだ。
 この物語は、一八六〇年頃の、白人社会とインディアンと呼ばれた人々との相克が、もっとも激しかった時代が舞台となっており、大地に焦がれるネイティプ・ピープルの心が鮮明に描かれている。それから百余年、歴史は流れたがこの物語は終わってはいない。
 ナバホの土地を案内してくれた青年は、自分をインディアンといわずにナバホと呼んでほしいと、はっきりいった。そして「われわれナバホは日本人を海の向こうのナバホと呼んでいる」という。なぜ彼らが日本人をそう呼ぶのか、私にとって年越しの公案となっている。 (MM)(1989年1月湧再掲)susanne borgsによるPixabayからの画像