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【湧】安全指南書

 

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 海上自衛隊の潜水艦との衝突による遊漁船転覆沈没事故は、多くの犠牲者を出す大惨事となった。事故原因については、順次明らかにされていくであろうが、この事故は我が国の民主化のレベルの低さを如実にあらわした事件であると思う。横切れると思って回避行動の遅れた潜水艦側と、一歩道を譲ろうとした遊漁船の双方が問題の焦点になっている。ここで問いたいのは、航行規則の下で平等であるべき両船の船長の心の中に傲慢と卑屈という不平等意識が存在していなかったかということである。回避義務や初期救助を怠った潜水艦々長や海上自衛隊の誠意を欠いた行為については、その責任を厳しく追及しなければなるまい。この点は多くの指摘が報道されているので、敢えて触れずにおこう。
 私はむしろ、事故時に遊漁船々長が安易な譲歩をしていたとしたら、そこを問題にしたい。

確かに黒い艦隊の行進は無気味で恐怖心をかきたてるであろう。しかし、本当に平等の原則を個人のレベルで十分に身につけて堂々と行動していたら、あるいは今度の事故は回避出来ていたのではないかという思いがどこかに残る。
 ふりかえって我々は日常生活の中で、官憲や原発に代表される産業への過剰な特権付与など一歩譲っているうちに、周辺に危機を呼び寄せてはいまいか。強者のおごり以上にわれわれ国民の長いものには巻かれろ式の卑屈な心こそ恐れなければなるまい。
 日本国憲法は公務員の横暴を禁じ、国民に徹底した平等主義への自覚を求めている。この機会に、個人生活から国家運営に至るまでの安全指南書として推奨したい。 (MM)(月刊「湧」1988年8月号)David MarkによるPixabayからの画像