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【チベッタン・ヒーリング:梅野泉】No4_誕生とは五大元素の結合。いのちは地水火風空が結び合って生まれた。

 私は両親の介護をしているとき、時々どうにもならなくなって何をするのも嫌になって「人間てなんなんだろう?」「いのちって、何?」と考えました。まるで独り言を言うように、です。つらすぎる場面がいくつもあったのです。どんどん衰弱していく親を介護するのはつらいものです。つらくなるたびに、五大元素で構成されている身体、宇宙に想いを馳せました。すると、いのちは地水火風空が結び合って生まれたもの、死んでゆくということは、それがほどけてゆくという過程、ととてもニュートラルに両親の「いま」を受けとめることができアヤン・リンポチェからの「意識の転移」の行の伝授も、「チベッタン・ヒーリング~古代ボン教・五大元素の教え」を訳したことも、ひとつながりのこととして、大変ありがたく思いました。生とは何か? 死とは何か? 自己とは何か? そのすべてを結ぶ糸が、五色の五大元素という糸だったのです。なんとシンプルなことでしょう!
 五色とは、地の黄色、水の白、火の赤、風の緑、空の青です。
伝統によっては水が青、空が白、というときもあるようですが、この場合、厳密さにこだわるということはないのがチベット流。チベットのルンタという経文が書かれた旗も地水火風空を表すこの五色です。いまではエスニックショップなどで売られることもあるので見かけた方も多いのではないでしょうか。チベットレストラン「タシデレ」に行けば必ずあります。友人の家のベランダでもルンタが風にはためいて、文字通り幸運が運ばれる幸せの風が吹いているようで、見ていて気持ちのいいものです。日本のお寺でも伝統的に五色の幟を使っています。

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薬師如来

もともと古来よりチベットには【森羅万象の源は五大元素】という考え方があります。五つのエレメントが集まることにより、現象が成り立つのです。この身体も五大元素によって構成されており、この宇宙の星々も太陽も月も地球も、すべて五大元素。樹木も花も花粉も。魚も動物も。最先端のコンピューターの小さなチップまで。きりがありませんね。
 もし、地水火風空のひとつでも欠けていたら、すべては存在しないということになります。五大元素って、ミクロもマクロも包含する壮大な考え方じゃありませんか!
 実は幼い頃から、森羅万象の奥には何か共通する働きがある、と思い続けていました。

それはさておき、忘れないうちに。アヤン・リンポチェが誕生について語られたことはこうです。「人が死ぬと意識はカルマの力に従って肉体から抜け、バルド(中有)へと入る。そして、次の段階として、カルマに従ってあたらしい身体を得ることとなる。よいカルマによって次の生も人間に生まれ変わる場合、意識は男女が性交中の身体を見て、その中に入り、そして風と火と水と土が順番に結合して、子宮のなかで成長して胎児となり生まれる」
チベット人の医師からも同じようなことを聞きました。チベット医学の聖典として有名な「四部医典」には誕生についても死についても、絵解きの解説が載っているのを見たことがあります。これはおそらく世界の宝と言える聖典ではないかと思います。
もとよりチベット仏教はチベット医学と密接な関係にあります。チベット医学は、生きとし生きるものを苦しみから救い解放する、という大乗仏教の精神を実践する道で、その精神を離れてはチベット医学は成り立ちません。昔の遊牧民の暮らしでは、村の医者が高い教えを授けるラマでもあったと聞きます。

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1988年春にダライ・ラマ法王へのインタビューのために北インドのチベット亡命政府所在地ダラムサラに滞在していた折、歯痛や風邪で高名なチベット医に何度かみてもらったことがあります。その時、言われたのは「五大元素が乱れています」ということ。そうなのです!病とは五大元素の乱れであり、健康であるとは、五大元素がバランスがとれていること。さらに、チベット医学の考え方では、肉体を持って生まれるということは、すでに煩悩が潜在した病んでいる状態で生まれてくる、ということなのだと知り、そうか、人間皆病人なんだな、とお互いに許しあえる妙にやさしい気持ちになるのでした。そして、怒りや執着といった煩悩を少しでも減らして健康になっていく薬として、教えがあるのだ、ということがスッと納得できるのでした。なかでも、五大元素の教えはシンプルなゆえにすべての病に効く万能薬だと思えます。
なぜなら、生まれてから死ぬまでのこの人生は、五大元素によって成り立っているからです。ともすれば五大元素に支配されがちな日々を、私たち自身が五大元素をコントロースしてバランスをとることができるようになれば、健康な毎日を過ごすことができるでしょう。
チベット医学について、もっと知りたい方はイェシェー・ドゥンデン著・三浦順子訳の「チベット医学」をおすすめします。
次回は、五大元素と親しみながら、人生を健康に過ごす秘訣をお話します。感情と五大元素の関係も興味深いですよ。
(文責は梅野泉)haichul66によるPixabayからの画像 

チベット医学―身体のとらえ方と診断・治療

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