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【湧】生命を継承するものの叫び

~責任を取りたくない権力者が引き起こす隠避~

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 生命に危害を加え始めた原子力発電の実状を訴えた本誌増刊号『まだ、まにあうのなら』が増刷を重ね、ついに十五万部を突破した。三万部を越えた頃から加速度をつけ日に日に出足が速くなっている。
 原子力事故の恐ろしさは、行きずり殺人のように無差別であり、被災の状態が直接把握できないことである。最近イギリスで、三十一年前の原子力事故が明るみに出た。事故当時原子力関係者は罹災した住民にそのことを知らせないで、もちろん避難退去をさせないで放射能を浴び続ける住民が白血病や癌で斃れていく姿を黙って見ていた。イギリスにはこの種の事故は国家機密として三十年間報道を制限することができる法律があるというのだ。危険なことをやっていても、事故が起こっていてもなかなか真実を知らされないというのが原子力問題の特徴であり、このようなことはどこの国でも大同小異で詮索はタブーとしてまかり通ってきた。
 そして更に確実に危険度が増しているのが、放射能性廃棄物の処理方法の問題である。各国の処理能力はその限界を越え他国へのなすりつけを始めた。ベルギーが西ドイツへ、フランスがスウェーデンへと商いの力学で拡散がはじまっているという。
 前述の増刊号の著者は二児の毋である。この生命を継承するものの、いのち限りの叫びが、特に女性の共感を呼び、現代文明の象徴である原子力発電の存在を根底から揺るがしはじめた。
いまや進歩発展のためにという免罪符が剥がれ、一つのタブーが白日の下に哂された。問われるのはエネルギー問題ではなく、人間自身の問題である。 (MM)

(月刊「湧」1988年2月号 再掲)

絵本ですが、同じ問題が「みなまた」でも起こりました。

 

みなまたの木 改訂復刻版

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