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【coffee break:お題】土手君の卒業

今週のお題「卒業」

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 これを娘が見ないことを祈る。土手君は、ちょっと変わっていた。中学生の時、剣道にのめり込み、これで高校に行けると確信し、受験勉強は殆どしていなかった。

 剣道で行ける高校は私立である。土手君は、年が明けてから突然、両親から「私立は無理」と宣告された。そこから、我武者羅に頑張ったが、限界はある。公立のボチボチな所に滑り込んだ。今なら、小池さんが頑張ったお陰(?)で、都内なら無料(勿論年収制限はあるが)で行けるが。。。

 土手君は仮面高一を過ごし、編入試験を受けた。見事に合格し、某女子高生と同級生になるのである。おしゃべりで、可愛く、フワフワしていて「もしかして、俺に気があるんじゃない?」と勘違いさせる曲者である。

 それでも、剣道には、打ち込んでいたらしい。若者が、スポーツに没頭すれば、無闇に健康に自信を持つものである。そして、高三を迎える。

 土手君は、前の失敗を反省したのか、そもそも国立を目指し、万全を期して、共通一次。。。いや、センター試験を受けるのである。

 と、前日、土手君を高熱が襲うのである。剣道に明け暮れ、乾布摩擦も欠かさなかったにも関わらず、インフルエンザの予防接種だけは受けていなかった。物心ついてから、風邪など罹ったことなどなかった、、、ここぞという時に、何かが起こるタイプなのであろう。

 その後、私立に専念する。もう、国立は受けられないからね。両親も最後なら何とかなると踏んだのであろう。そして、目出度く、W大学に受かるのである。大したもんだ、と思う所であるが、土手君は法曹界に憧れており、高田馬場でなくては、意味がない。じゃあ受けるなよ、所沢、と思うが、受験生は複雑な気持ちで、有名大学の何処かには受かりたい。そんな気持ちは浪人生ならよく分かる。

 そして、土手君は暴挙(?)にでる。「卒業」式の日、某女子高生の前で高らかに宣言する。「俺は、来年、この高校で初の東大生になる」某女子高生の視線を感じながら、自分に酔っているに違いない。

続いて、某女子高生に小さな紙を渡すのである。

『土手に来てくれ』

もちろん、本物の「荒川の土手」である。青春ど真ん中のシーン、恥ずかしながらも、羨ましい。

だが、某女子高生は家族の前で楽しそうに話している。

「え、土手君は?」

「そのまま、帰ったから、知らない」

悪魔である。

(nishitakesiによる文章と画像)