『湧』<blog magazine> nishitakesi

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【湧】土の生命

~土は、人間のバロメーターだ~

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 土が病んでいる。その何よりの証拠においしい作物が少なくなった。化学肥料や農薬を使用して土壌中の生命環境が変化したからだろう。

 その昔、土壌に合成化合物を加える農業を考案した人たちの筆頭に化学者リービッヒがあげられるが、今その彼は土の生命に危機をもたらした張本人であると批判されている。しかし一方リービッヒ擁護論もある。彼こそ経済利益のみ優先した当時の土壌成分の収奪農業を誰よりも憂えた人であるという。

 優れた人がすべてに配慮を加えて閧発した技術でも、ひとたび利益優先の社会に迎えられると必ずといっていいほど生命を損なう方向に走ってしまう。気がついたときはあとの祭りである。その頂点が核エネルギーの問題であろう。

 あのチェルノブイリ原発の事故は周辺のかなり広大な土地や地下水を多量の放射性物質で汚染してしまい、その後も被害を拡大しつつある。かつての原爆の実験で土地の放射能汚染と白血病や癌の患者の発生との相関関係ははっきりしており、今度の汚染の量をこのスケールにあてると、数年を待たないで恐ろしい未曽有の大被害がはっきり表れはじめるといわれる。生物に被害のでる範囲は半径千キロメートルに及んだというから、狭い日本であの規模の原発事故が一つ起これば、国土全域の生命環境は永久に失われ、高度成長を誇った日本の経済は破滅して円紙幣は紙屑同然となろう。
 土が病めば人が病む、土が死ねば人が死ぬ。  (MM)

(月刊「湧」1986年12月号)<Free-PhotosによるPixabayからの画像>