『湧』<blog magazine> nishitakesi

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【湧】イマジネーション

~全体性や構造を捉るには、ミニチュアは最適!?~

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 先日、東京の青山にある風変わりな店を二軒訪ねた。
 一つは「シンク・ビック」という店で、店内には人間の身長ほどもあるエンピツや三人が楽に座れる野球のグローブ、腹に巻いても余る大腕時計などが展示されている。
 もう一つは、この店の近くにある「グルベア」というミニチュアを売る店で、ここには間口五十センチの豪邸と、その中に入る人形や、家具から食料品にいたるまでのあらゆる生活用品のミニチュアが揃えてある。

 この日は午後から二時間ほど、心理学者の関計夫氏から知覚研究の権威でゲシュタルト心理学の第一人者であるアルンハイムついて、その人と仕事の話を伺っていた。この話が発展してイマジネーションと芸術、あるいは宗教との関係に及び、その延長線上で関氏をご案内して前述の店を見ようということになったのである。

 私は以前に一度この店を見ていたがその時は、これらの商品の意味がつかめなかった。しかし今回、関氏のお話を聞いた新しい目で、大型トランプカードやミニチュアのリビングルームと静かに対面してみると、日常性の中に埋没して、実物ではかえってつかみにくくなっていたそのものの本質を、むしろこの模造品がよりリアリティーをもって訴えかけているように感じられ、これらの商品の存在理由がうなずけてきた。

 情報媒体のビジュアル化、具象化がすすんでますますイマジネーションを許さない情報氾濫の昨今、日常性をちょっと外してこんな店を訪ねるのも一興かと思う。(MM)

(月刊「湧」1986年11月号 再掲)<CouleurによるPixabayからの画像>