『湧』<blog magazine> nishitakesi

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【湧】中国の印象(本文はかなり前です)

~中国2年間仕事でしたが、高層㌱•📲数は大負け~

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 このたび思わぬ機会をえて中国の北京市天津市を訪ねた。私にとっては初めての中国旅行であったが、中国はいま新しいものがどんどん入り激しい変化の時代を迎えている。市街地はいたるところで高層ビルの建設が進み、郊外の幹線道路を自転車や馬車が行き交い、古いトラックが荷物を満載して走り、それを最新型の日本製やドイツ製の乗用車が追い越して行く。

 そしてカーラジオからはロックや日本の演歌の新曲が流れてくる。若い女性の半数はためらいがちに口紅をつけ、観光地は未整備のまま見物客でごったがえしている。あらゆるものの変化が急なことを思わせる。

 この国の第一印象は「沸かしたての風呂に入った感じ」とでも言おうか、熟湯と冷水が混じり合わずにいてぎくしやくした皮膚感覚に包まれる時のあの感じそのものであった。

 だが、この不安定感を払拭してしまうよき人との出会いもいくつかあった。よく晴れた日、にぎやかな万里の長城を歩いていたとき、三人の娘さんとすれ違い懐かしいものを感じてつい写真のモデルにと頼んだ。この娘さんたちはためらわず応じてくれたが、この時のような気持ちのよい快調な撮影はカメラ歴三十年の私にも初めてのことであった。彼女らには彼我の境目が全くない。このような人がどうして実在するのか不思議にさえ思った。別れ際になって、この娘さんたちは数千キロのかなたからたまたま出て来た転族(少数民族)の人とわかり、彼女たちの存在の謎も解けてきたような気がしたと同時に、中国の底力を感じた。

 広い大地、長い歴史、そして十億の民、中国のふところは深い。  (MM)

(月刊「湧」1986年10月号)