『湧』<blog magazine> nishitakesi

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【湧】円高に思う

~実業の発展があっての、虚業ですから~

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 2年ほど前、第一線で活躍している若いエコノミストやビジネスマンの集まりに出たことがあった。その中に金融企業に勤務している人がいて、その人の報告によると、最近は海外への融資と回収の仕事が増えて極めて多忙の毎日であり、日本はいまや金貸し業の国になっているという。そして若いエリートの人気業種は自動車産業でもエレクトロニクス産業でもなく、金融産業に集中しており、もの作りで稼ぐ時代は過ぎ去りつつあるという。いったいどんな時代になるのだろうかということで、興味のある話題が続いた。

 それから僅か二年の間に、世界の経済情勢は急速に変化して、日本は今、円高の大波にもまれている。経済の動きで社会状況が変わるので我々には生活や産業・文化的営為があたかも経済変化にリードされているかのように見えるが、大局的に見れば人々の活動のエネルギーがそこに集中したから経済活動にあらわれたというのが順序なのであろう。

 この数世紀の間に人気貨幣はフランーポンドードルー円と地球上を移動してきたがそのどれ一つとして経済学者のデザインどおりに動いたものはない。表面に現れた金や物や人間の願望などを見ていたのでは問に合わない事柄で、人々の努力や腕力では変えることができないとめどもない大きないのちのエネルギーの流れなのだろう。人間がこのエネルギーを単なる物質的富だけにかえてしまう愚行を犯すと、その都市は生命力を失い、いのちの流れは本当のいのちを求めて次の都市へ向かって、またさまよいの旅を続ける。  (MM)

(月刊「湧」1986年9月号 再掲)