『湧』<blog magazine> nishitakesi

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【湧】初めか終わりか(映画)

~ネット時代でもこの映画は抹殺、原発の扱いも変わらず~

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 やはりチェルノブイリ原発事故のことを言わずにはいられない。
 時代はさかのぽるが、昭和二十六年頃に『初めか終わりか』という題のアメリカ映画が東京で公開された。この映画は、原爆の開発実験の様子から日本爆撃の準備、アクシデントによる科学者の被ばく事故、そして広島への投下の模様までが実写フィルムも使って克明に描かれていた。核エネルギーの実用化は人類にとって初めなのか終わりなのか。当時これを見た私は大きな衝撃を受け、その後の文明に対する懐疑の出発点となった。実はこの映画は、三日間ほどで上映が打ち切られてしまい、その後消息を聞いたことがない。
 さて、史上最悪の今度の原発事故は、直接多くの被ばく犠牲者が出たというばかりでなく、放射能汚染が北半球全域に及び、その被害の拡大は計り知れないといわれている。事故当時、自国の原発は絶対安全といっていた当のアメリカで、最近、下院の公聴会の席上ある委員が、「現在のアメリカの安全基準では炉心熔融が起こりうる。今後二十年以内に今回のソ連原発事故と同規模かそれ以上の事故がおこる可能性がある」と証言し、内部批判がはじまっている。
また、この原発事故後に行ったアメリカの世論調査では、十人に八人が新規原発建設に反対、十人に四人が既存原発の廃止を支持すると答えたという。
 かつて夢のエネルギーともてはやされた核の利用は、三十五年も前のあの映画『初めか終わりか』の初発の問いに回答をせまられる時代に入ったようである。
 チェルノブイリ原発の事故は、人間の未来にとって禍となるか福となるか。(MM)
(月刊「湧」1986年6月号 再掲)